安寧を追い駆ける夜

 ぐちゃぐちゃになればいい。すべて、ぐちゃぐちゃになってしまえばいい、衝動。腕を切りたい気持ちとはまた違う、けれど切っているところを何度も切ってしまいたいような、爪で引っ掻き回したいような、そんな衝動。目に見える形で自分を傷つけて、罰を与えて、それでようやく得られる安堵。そんな仮初めの赦しが欲しくて、何度も、何度も何度も負けてきた。呑まれて傷をつけては後悔をねじ伏せて、また呑まれれば忘れたように傷をつけて、どうして、と親に泣かれたトラウマだってある。けれど、思い出せる。耐えてやり過ごせた時だってあった、ということを。波が引いていくのを、じっと動かずに待つことだって出来た、と。覚えている。だから、後者が、やり過ごせる時間が、少しずつ増えていけばいい。泣いて足掻いてそれから、覚束なくても、抱きしめてあげられる日が来ればいい。いつか、いつか赦してあげられる日が来ればいい。自らを、自らの手で殺してしまう前に。

 

 私が、私で在ってもいいと思える、そんな日が。