いつかのこと

眠りに落ちることができなかった夜を、歪なこころごと抱き締める。

部屋に充満する夜食の残り香が私を罪悪感の海へ突き落として、

呼吸すらうまくできないから、ただひとり震えた指先でシーツを手繰り寄せた。

ぬくもりは此処に在る、けれどいつまでも冷えた心地がして、

知っているようで知らない誰かの体温を求めては孤独だけを知っていく。

閉じた瞼の奥から溢れ出した滴が静かに頬を伝う。

 

開かれたままの乾いた口内に流れ込んだそれは、たしかに潮の味がした。